『植物』
ねぇ、君の絵を描いてあげるよ。
うふふ、何言ってるのあなた。あなた、目が見えないくせに絵を描くだなんてばかね。
描けるさ 目が見えなくたって 簡単だよ。ほら、ポーズをとってよ。
*
ほら、描けたよ!
あら、まぁ本当、とても素敵な絵ね!私に似てる。ありがとう!
・・・・・・何言ってるんだい、君も僕と同じ、めくらじゃないか。見えないんだろ。
えぇ、見えないわよ。あなただって、でたらめに筆を振り回しただけなんでしょう。
あぁ、そうだよ。
・・・まっくらね。
あぁ、まっくらさ。まっ・・・くら。
えぇ、まっくら。もう、まっくらくらよ。
・・・ ・・・
*
カサカサカサ
あ、そこにいるの、ねずみ?ねずみさん?この絵、どう?彼が私を描いてくれたんだけど私に似てる?
・・・
ねずみさん?絵、見えてるんでしょ?どんな絵が説明してほしいのよ。私たち目が見えないの。
・・・
ねずみさん?ねぇ、ねずみさん。
・・・
ねずみさん、もしかして、耳が聞えないの?
・・・
でも、目は見えるのよね。
「「この絵、どんな絵?素敵?私に似てる?私たち目が見えないので教えてほしいのです。」」
・・・
「「 ・・・ 」」
ねずみさん、なんとか言ってよ。
*
ねぇ、ねずみさんから小包が届いているよ。なんだろう。
えー、ほんとう?何かしら、あけてみましょう。
これなんだろう。つるつるで丸くて薄いもの。
これCDじゃない?
メッセージがついてる。
「「あの絵、こんな感じです。音楽にしました。聴いて下さい。」」
まぁ素敵。聴いてみましょう。
*
とっても素敵な音楽だね。
でも彼、耳が聞えなかったじゃない。どうやって音楽を作ったのかしら?
ぼくだって、見えないのに絵を描いたじゃない。おなじさ。
見えない 聴こえない 喋れない 私たちこれじゃぁまるで植物みたいね。
でも素敵なもの作れたよ。
そうね。素敵なもの作れたね。
素敵なもの。
うん、素敵なもの。
・・・うっ、げほっげほっ。
大丈夫?
うん、大丈夫。少し寒くなってきたね。
そうね。
*
おわり
2007.2.1「しょくぶつ」